自分が生きているうちに自分のお墓を作る
「寿陵墓」とは、簡単に言うと自分が生きているうちに建てる自分のお墓のことです。
別名「生前墓」と呼ばれることもあり、本来亡くなってから作るものである墓石を先に設置しておくことで、死後行う事務手続きを軽くすることができるとともに自ら希望する墓の中に入ることができるようになるというメリットがあります。
寿陵墓には自分本人のためのお墓の場合と、夫婦で入ることを前提に建てるものとがあります。
墓石を作るときにはその中に入っている人の名前をあらかじめ彫っておくという方法がとられるのですが、寿陵墓ではまだ入っていないということを示すためにわざと朱色を使って文字を染めておきます。
その後本当に亡くなって墓に入るときには朱色から黒色に塗り替えそこで墓が完成となるのです。
自分が生きているのに自分の墓を建てるなんて縁起が悪いなと思う人もいるかもしれませんが、この「寿陵墓」は文字からもわかるようにもともとは縁起の良い物として取り扱われてきました。
起源をたどると古代中国に遡り、古書の中にも「寿蔵」「寿穴」といった言い方で先にお墓を作っておくことの縁起の良さを語っています。
日本にも身分の高い人を弔う「古墳」が各地に残されていますが、これは当時の技術で全て作り上げるまで約15年くらいかかるとされています。
亡くなってから古墳を作ったケースもあるようですが、蘇我蝦夷・入鹿が生前に自分の墓となる「寿墓」を作ったという記録が日本書紀に残されています。
縁起だけじゃない寿陵墓のメリット
なぜ生前に作る墓が縁起が良いというと、それは昔から縁起が良いものなのだというふうに言われてきたからということが理由のようです。
どういった逸話から縁起が良いとされるようになったかはよくわかりませんが、エジプトのピラミッドしかり時の権力者というのは自分の死後もその影響が長く続くようにという象徴のために大きなお墓を作りたがったことが元ではないかと推測できます。
そうした大きな墓は作り始めてから出来上がるまで非常に長い時間がかかるので、自分の権力があるうちにその象徴である墓も作ってしまいたのでしょう。
それがいつの間にか転じて「一家に続いていく長寿や繁栄」の象徴になったのかもしれません。
しかし縁起という面だけでなく、寿陵墓には多くのメリットがあります。
まず生前にお墓を作っておくことにより、子孫となる子供や孫が改めてお墓のために出費をしなくてもよいということがあります。
墓石は決して安い買い物ではないため自分が死んでから子供のお金で作らせるよりは、自分の財産で思うような形のものをつくった方がよいという大きなメリットとなります。
税金面でも優遇措置がとられます
お墓を生前に作るときに気がかりなのが、その維持費が負担になってくるのではないかということです。
土地や住宅といった不動産は、自分で使用していなくても所有者として登記があるだけで年間かなりの維持費が負担としてかかってきてしまいます。
ですがお墓の場合には固定資産税はなく、かかるとしても年間そのお寺や霊園におさめる管理費用のみとなっています。
土地や建物のような不動産取得税もかかりませんし、相続前に自分の財産で作るものなので子供に渡る相続税を軽くすることもできます。